<aside> 📕 本記事はi Magazine 2020 Spring(2020年2月)に掲載されたものです。(c)i Magazine
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<お話を伺った人>
野澤 剛氏 プラットフォームビジネスユニット ITシステム課/管理課課長
池部 友紀氏 プラットフォームビジネスユニット ITシステム課 チーフ
佐川グローバルロジスティクスは、総合物流企業グループのSGホールディングスグループ(従業員約9万人、売上高約1兆1180億円2019年3月)の一員で、ロジスティクスソリューションを提供する企業である。グループ会社に、全国に配送ネットワークを築く佐川急便や海外物流を専門とするSGHグルーバルジャパンなどがあり、グループ各社との緊密な連携によって顧客企業(荷主)のニーズにきめ細かく応えられる対応力・機動力が大きな特徴である。
今回レポートするのは、化粧品や健康食品、通信機器など多様な商材を扱う同社のなかで、衣料量販店向けのアパレル商品・小物・雑貨の物流ソリューションを担当するプラットフォームビジネスユニットの取り組みである。同ユニットが荷主とするアパレルメーカーは20社以上、衣料量販店を展開する企業は200社以上あり、配送先は数千店舗にも及ぶ。
同ユニットでは、顧客の物流ニーズを踏まえて、商品の入庫から配送までの物流ソリューションをトータルに設計し、顧客ごとのシステムを構築してサービスを提供している。倉庫内のサービスには、X線検診や商品タグ・RFIDタグの取り付け、商品を1着ずつハンガーにかけて納品する「ハンガー納品」など多様な流通加工サービスがある。「ときには倉庫内の業務オペレーションも設計し、ご提案することがあります」と、プラットフォームビジネスユニットの野澤 剛氏(ITシステム課/管理課 課長)は話す。
同ユニットの強みは、9台のマテハン機(自動仕分機)を含むさまざまな自動化設備によって高品質かつローコストのサービスを提供できることと、倉庫管理システム(WMS)を内製化しているため、顧客ごとに異なるWMSをきめ細かく設計・構築でき、すばやく立ち上げられることである。IBM i上のWMSは2000年代後半に標準化を進めた経緯があり、標準機能をベースにすることによって、スピーディなシステム構築とサービスインが可能になっている。
そしてもう1つの強みが情報力・データ活用力で、同ユニットの社員はBIツールを駆使して顧客商品の在庫や配送の状況を分析し、効率化やコスト削減の提案を顧客に対して行っている。
同ユニットでは従来、データ抽出のためのクエリ・プログラム(RPG)と、抽出したデータをPCへ転送するWindowsアプリケーションを開発し、約50名のユーザーに提供していた。抽出したデータの転送には、IBM i Access for Windowsのデータ転送機能を利用したという。ユーザーはクエリ・プログラムを開いて求めるデータを抽出すると、バックグラウンドでWindowsアプリケーションが起動し、PC上にダウンロード表示されるという仕組みだ。
「ユーザーが必要とするクエリ・プログラムはシステム課で開発して提供していたので、ユーザーは取得したデータをExcelなどで加工して利用する環境が定着していました」(野澤氏)
2019年1月に、10年以上利用してきたIBM iを入れ替えることになり、従来からのクエリ・プログラムの移行が課題になった。IBM iのOSをバージョンアップするとWindowsアプリケーションの改修が必要になり、約50台のPCの再セットアップも必要になり、移行作業の負荷が大き過ぎると判断されたからである。
「それに加えて、5250画面を使うクエリではデータの多角的な分析に限界があり、その点の解決もテーマでした」(野澤氏)
2017年末からの検討で最初に俎上に乗せたのは、日本IBMのDb2 Web Queryである。
「機能が豊富な点は非常に魅力的でしたが、当社としては従来と同様、データをCSVで吐き出す程度の使い方を想定していたので、少しリッチ過ぎるという印象をもちました」と、野澤氏は振り返る。
一方、2018年7月にツールの存在を知り検討を始めたのが、オムニサイエンスのPHPQUERYである。最終的に同ツールを採用したが(2018年10月)、初めてツールを見たときの印象を、野澤氏は次のように話す。
「PHPQUERYはこの1〜2年に機能拡張が急ピッチで進んでいますが、初めて見たときはCSVを吐き出す程度の非常にシンプルな製品でした。しかしながら、当社が必要とする機能は最小限備えていたのと、料金が安く、かつ月額料金制で、いつでも解約できる点が気に入り、採用を決めました」