<aside> 📕 本記事はi Magazine 2017 Winter(2017年11月)に掲載されたものです。(c)i Magazine
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<お話を伺った人>
菅井 健一氏 管理室 室長代理
吉田 武夫氏 経理・総務本部 情報システム管理室 主任
データ提供の迅速化やシステム部門の負荷軽減を実現
ヤマサ醤油の創業は1645年。江戸幕府第3代将軍・徳川家光の時代に、紀州(現・和歌山県)の商人・濱口儀兵衛が下総国(現・千葉県)銚子へ移って醤油醸造を始めたのが発端である。以来372年間、銚子を拠点に醤油一筋に業を営み、現在も本社・拠点工場を同地に置く。
経理・総務本部 情報システム管理室の菅井健一氏(室長代理)は、同社の特徴を「伝統と革新」と語る。「伝統の味と品質を営々と受け継ぎながら、新しい価値を不断に創造し提供していくことをモットーとしています」(菅井氏)
近年では、醤油の酸化を防止する画期的な容器の「ヤマサ 鮮度の一滴」シリーズを発売し、「鮮度」を醤油の価値として浸透させるとともに、鮮度ブームの先駆けとなった。また、この8月に味をリニューアルした「まる生ぽん酢」は、「4つの生素材を使ったぽん酢」という新しいコンセプトが好評である。
同社のこうした「革新」は、消費者と市場動向に関する精緻な分析から生まれている。
醤油市場は1994年から年々出荷量が減少し、その一方で醤油をベースとするめんつゆやタレ類の生産量は年々増加が続く。この背景には、食習慣の変化や食嗜好の多様化、バラエティに富む調味料の登場などがあり、それらが複雑に絡み合って巨大な変化が進んでいると言われる。つまり、消費者や市場動向の分析なくして、醤油も含めた食品ビジネスの進展はあり得ないのである。
菅井氏は、「基幹サーバーをメインフレームからIBM iへ切り替えた2003年あたりから、社内でデータ活用・分析がさかんになりました」と振り返る。
従来は、ユーザーからデータの要求があると、その都度、システム担当者がQuery/400やSQLを用いてクエリーを作成し、データを取得してExcelやプリントなどで提供していた。Query/400で作成したクエリーの総数は約9000本。同社がいかに活発にデータを利用していたかがうかがえる。
ただし、この運用にはいくつか問題があった。クエリーの作成方法に基準がない、作成方法が属人化しノウハウが共有されない、システム部門の負荷が非常に大きい、スピーディにデータを提供できない、データの提供方法がばらばら、などである。これらは、データの利用が活発になるにつれて、徐々に顕在化してきた。とくに属人化の問題は、「醸造工程に精通したシステム部員が定年退職したことによって解決すべき問題となっていました」と、菅井氏は話す。
そこで同社は、Query/400で作成したクエリーをSQLに置き換えた(図表1)。「SQLにすることでクエリー作成の条件を見える化し、ノウハウ部分をわかる形にしておく」(菅井氏)狙いである。
【図表1】